日本では遥か昔から身近な食材だったアサリに寄生する生物がいるのはご存知ですか?
ここではアサリの中にいるかもしれない寄生生物についてご紹介します。
知っておけば、もし突然出会ってしまっても必要以上に驚かなくてすむかも?
色んな料理にひっぱりだこな「アサリ」
3月中旬~6月にかけて旬を迎える「アサリ」。塩分が薄い、汽水域の砂や砂泥で生活する二枚貝です。
プリプリの身に旨味がぎゅっと詰まっていておいしいですよね。
定番の酒蒸しやパエリア、ボンゴレパスタにクラムチャウダー、味噌汁や炊き込みご飯にしてもたまりません。
潮干狩りで楽しみながらアサリを手に入れて、その後おいしく食べられるのですから、一度に何度も楽しませてくれる嬉しい食材とも言えます。
さてそんなアサリなのですが、やはり?寄生生物の宿主になることも。
どんな生き物がアサリに寄生するのでしょうか。
アサリに寄生する生き物とは?
寄生生物は世界にもたくさんいますが、アサリに寄生するのは大きくふたつ。
寄生虫はともかく、寄生するカニというのはあまり聞いたことがないですよね。
カイヤドリウミグモとピンノとは、それぞれどんな生き物なのでしょうか?早速ご紹介していきます。
貝につく寄生虫「カイヤドリウミグモ」
アサリにつく寄生虫で多いのは、「海の吸血鬼」の異名を持つなんとも恐ろしい寄生虫「カイヤドリウミグモ」です。
(海洋性の)節足動物門皆脚(ウミグモ)属に属する生物で、名前や姿は似ていますがクモの仲間ではありません。名前の通り、二枚貝などに寄生します。
毒性もなく、万が一食べてしまっても体に害はありません。
胴体が小さく、ほとんどが脚でできているようなその見た目だけでもかなりのインパクトなのですが、恐ろしいのはその食事方法。
発達したストローのような口を宿主に差し込んで、体液を吸って生きています。
なのでこのカイヤドリウミグモに寄生された貝は徐々に弱っていき、やがて死んでしまうのです。
2007年には、アサリ漁が盛んな木更津湾の盤洲干潟でカイヤドリウミグモが発生し、アサリが大量死してしまうということが起こりました。
他の海域への拡散はみられないようですが、この2007年以降、アサリの漁獲量が10分の1ほどにまで低下してしまったのだとか。
はじめのカイヤドリウミグモは他地域から持ち込まれた稚貝に寄生していた可能性が高いとみられていますが、この海域だけで大量発生した原因は未だ不明です。
寄生カニ「ピンノ」
アサリが好きで、よくアサリ料理を食べている方なら目にしたことがあるかもしれません。
アサリの身をとろうとすると…おや?中に小さなカニが!とっても小さいのでカニの赤ちゃんだと思われることが多いのですが、実はこの大きさで一人前。
この小さなカニ、通称「ピンノ」と呼ばれ、十脚目カクレガニ科に属しています。
二枚貝だけでなく、ナマコやホヤ、ウニなどにも寄生します。宿主を食べてしまったりということはないのですが、場所を取るので二枚貝だと身が育たないことも。
メスは約1cm前後の大きさで、子供の頃に宿主を見つけてからはずっとその場所で暮らします。
オスはメスの1\4から1\2ほどの大きさしかなく、宿主を見つけても自由に出入りすることができるため、わたしたちがアサリなどを食べるときに目にするピンノはほとんどがメスだと考えられるのだとか。
また研究では、ニュージーランドに生息するピンノのオスが、二枚貝の中に入っているメスに出会うため4時間もの間貝の縁をくすぐり続け、ついに貝の中に潜り込むことに成功した姿が捉えられました。
おそらく他の場所に生息しているピンノも似たようなことをしているのではないか、とのこと。なんだか健気で可愛らしく思えてきませんか?
そしてなんと、とても小さい寄生カニであるピンノに、更に寄生虫がつくことがあるのだとか。
「フクロムシ」と呼ばれる、甲殻類につく寄生虫なのですが、寄生生物に更に寄生生物がつくというのはなんとも不思議な話ですよね。
まとめ
2. よく見られるのは「カイヤドリウミグモ」と「ピンノ」
3. カイヤドリウミグモは海の吸血鬼の異名も。貝の体液を吸って死なせてしまう
4. 見たことがある人は少なくないかも?ピンノは小さな寄生カニ。1cm前後でも立派な大人
寄生生物ときくとちょっと怖いイメージがわきますが、貝の中に住む小さなカニというだけで、とっても可愛らしく感じるピンノ。
一方カイヤドリウミグモは寄生虫のイメージ通り?宿主を栄養に変えて、最終的に死なせてしまいます。見た目もちょっとグロテスクに感じる人は多いかも知れません。
寄生生物も一生懸命に生きてはいるのですが、寄生された宿主はどうしても身が小さくなったりということが。
できれば何もついていない、プリプリのおいしい貝を頂きたいものですね。