魚介類で満点生活

猛毒注意の「カツオノエボシ」実は○○の群体だった…!

「電気クラゲ」という呼び名を聞いたことがありますか?

そう呼ばれるクラゲはいくつかいますが、その筆頭がカツオノエボシ

透き通った浮袋と青い触手がなんとも美しいですが、その実、猛毒を持っています。

そんな不思議なクラゲ「カツオノエボシ」は、実はとある生き物が集まったものだった…ということで、その生態や危険性をご紹介します。

カツオノエボシってなんだ?

夏の終わり頃になると、砂浜などに漂着することがある「カツオノエボシ」。透き通った風船に青い絵の具をかけたような姿で綺麗なのですが、猛毒を持つことで知られています。

クダクラゲ目カツオノエボシ科に分類され、日本でよく見られるのは太平洋沿岸。今まででも、神奈川県や京都府、その他、太平洋沿いの海岸で大量漂着があったことが確認されました。

特徴的な浮袋は約10cmほどで、中には二酸化炭素を主にした気体が詰まっていて、これを使って浮いています。

カツオノエボシ自体に泳ぐ力はほとんどないとされ、浮袋を膨らませたり、しぼませたりしながらぷかぷかと海流に乗ってくるのだとか。また、浮袋には三角形の帆があり、これで風を受けることも。想像するとちょっと可愛いかも?

ですが、浮袋から伸びる触手は平均10m、長いと50mほどにまで成長することもあり、近くに浮袋が見えていなくても刺されてしまう危険性があります。

その触手が何らかの刺激を受けると、刺胞(しほう)と呼ばれる小さな毒針を発射します。これがかなりの猛毒なので、注意が必要。詳しくは後ほどご紹介しますね。

名前の由来は?

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「カツオノエボシ」という名前、なんだか不思議ですよね。

由来はというと、魚のカツオがやってくる時期に一緒に海流に乗ってくること、浮袋の見た目が「烏帽子」に似ていることから、カツオノエボシと呼ばれるようになったと言われています。

英名だと”Portuguese man-of-war” 「ポルトガルの軍艦」といい、これは浮袋が昔のキャラベル船に形が似ているから呼ばれるようになりました。

またその見た目から「Blue bottle(青いボトル)」や、強い毒性から「Floating Terror(浮いている恐怖)」という異名も。世界中に広く分布するため、ほかにも色々異名がありそうですね。

日本では「電気クラゲ」という呼ばれ方をすることもありますが、これは刺されたときの痛みが、まるで電気が走ったようだからそう呼ばれるようになったと言われます。

怖いですね。絶対に刺されたくないです。

どんな毒を持ってるの?

カツオノエボシの毒についてはまた全て解明されていません。
しかし、主な成分はペプチド毒(タンパク質毒素)であるということはわかっています。
刺されると痺れるような激痛が走り、患部が赤く腫れ上がります。やけど跡のようなものが皮膚に残ることもあるとか。

それだけではなく、重症になってしまうと血圧上昇、嘔吐、呼吸困難、また皮膚の壊死や心臓への毒性もあり、ショック状態の危険も。死亡例もあるほどなのです。

アナフィラキシーショックを引き起こすこともあるので、一度刺されたことがある方は特に気をつけなければいけません。

カツオノエボシは○○の集まり!?

そんなカツオノエボシですが、クラゲと呼ばれるものの、実はミズクラゲなどの「クラゲ」とは違うもの。
とはいえ、昔から月の形の生き物は全てクラゲと呼ばれていたため、カツオノエボシもクラゲでいいのだそう。よかったね、カツオノエボシ!

英語ではジェリーフィッシュと呼ばれるクラゲたちは、ポリプから成長してよく知られるクラゲの形になる(詳しい説明は省きます)のに対し、クダクラゲの仲間であるカツオノエボシは、ヒドロ虫と呼ばれる生き物がたくさん集まってひとつの形を作っている、群体だったのです!

そのヒドロ虫ひとつひとつが浮袋や触手になり、カツオノエボシになっているのですね。なんだか健気に感じます。

○○虫ってなに?

「ヒドロ虫」とは、刺胞動物門、ヒドロ虫綱の動物の総称、です。しかしカツオノエボシを形作っているのは発達したヒドロ虫綱の「ポリプ」で、その発達したポリプのこともまた、ヒドロ虫と呼びます。かなりややこしいですね。

ヒドロ虫は、刺胞生物(クラゲなど)の中でも最も単純な構造だと言われていますが、形は様々あり、かなり興味深い生き物でもあります。

ヒドロ虫の中で、一個のヒドロ虫がひとつの生き物になる場合もあるのですが、ほとんどは群体を作ります。
カツオノエボシの場合、四個のヒドロ虫がそれぞれ、浮袋、触手、食体(消化を行う部分)、生殖器と形を変え、それらが合わさってひとつのカツオノエボシとなるのです。

刺されないための対策

まずは、海岸に流れ着いたカツオノエボシを見ても絶対に触らないようにしましょう。

カツオノエボシの毒針は、物理的な刺激で発射される、いわば反射のようなものです。とても綺麗ですが、注意してください。

また、打ち上げられて時間が経ったカツオノエボシは、干からびて一見ただのビニールの切れ端のようですが、湿気を吸えばたちまち毒針を発射します。お子様やペットは、特に気をつけてあげてくださいね。

そして万が一刺されてしまった場合。

まずは塩水で洗い流しましょう。

真水は浸透圧の差で毒が体内に入り込んでしまうのでNGです。

触手がとれない場合はタオルなどを使ってそっと取り除きましょう。軍手などでも危ないので注意です。

クラゲに刺されたときは酢をかけるといいと言いますが、カツオノエボシには逆効果。その刺激で更に毒針を発射する危険があるので絶対にしないでください。

その後、なるべく早く医療機関を受診してください。症状が急だったり酷い場合は救急車も視野に入れましょう。

まとめ

1. カツオノエボシは猛毒のクラゲで、触手は50mほどになることも!

2. カツオの時期に現れること、見た目が烏帽子に似ていることから名付けられた

3. ペプチド毒を持ち、刺されると激痛が走る。ショック症状の危険も

4. 他のクラゲと違い、複数のヒドロ虫の群体がカツオノエボシ

5. ヒドロ虫とは発達したポリプのこと。四個のヒドロ虫それぞれに役割がある

6. 絶対に触らない。子供やペットは特に注意。もし刺されたらすぐに毒針を取り除いて受診しよう

綺麗なバラには棘があるといいますが、綺麗なクラゲには猛毒がありました。もし海岸でカツオノエボシを見つけた際は、絶対に触らない、ということを徹底してくださいね。

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