リュウグウノツカイという深海魚をご存知でしょうか。謎に包まれた生態と、色鮮やかな赤いヒレ。一度目にしたら中々忘れられません。
自身の前触れともいわれる気になる存在の深海魚。
リュウグウノツカイの気になる生態
まずはリュウグウノツカイの分類や生態についてご紹介します。
リュウグウノツカイは、アカマンボウ目リュウグウノツカイ科に分類されます。
太平洋や大西洋、インド洋などに広く生息していて、海底ではなく海の中層を漂っています。群れは作りません。
普段はオキアミなどのプランクトンを食べていることが、調査によりわかりました。
泳ぐときは前傾姿勢になって、体や背びれをゆっくりと波打たせるようにします。泳ぐというよりも漂うと言ったほうがいいのかもしれません。
普段は体を直立させた姿で静止していると言われています。どちらも、イメージとしてはタチウオに近いのではないでしょうか。
また、エネルギー消費を抑えるためや、天敵に襲われたりした際に体の後ろ側を切り離す「自切」を行うことがあります。トカゲの尻尾切りに似ていますが、再生はできないため一度切ったらそのまま生えてきません。
自切をせずに生涯を終えることのできる個体は非常に少ないと言われています。
生きて人前に姿を現すことが少ないリュウグウノツカイの生態は、まだまだ謎だらけ。やっぱり深海魚にはロマンが詰まっていますね!
おしゃれ?派手すぎ?特徴的な姿
リュウグウノツカイといえばその特徴的な見た目ですよね。帯のようななが~い体に、目を引く鮮やかな赤いトサカのようなもの。本当に魚なのかな…?と疑ってしまうような変わった姿をしています。
一般的には全長3m前後のことが多いですが、なんと全長11m、重さ272kgの個体が見つかったことも!現生している硬骨魚類(エイやサメなどの軟骨魚以外の魚のこと)の中で世界最長を誇る魚です。
そして驚きなのが、リュウグウノツカイにはウロコも浮袋も、歯もないということ。
静かな深海でプランクトンを食べる生活には、どれもあまり必要ないのかもしれませんね。
銀白色で平たく細長い体の側面には、薄い灰色~薄い青の側線が上下互い違いに並んでいます。
赤い部分は背びれで、頭に近い部分のみ長く伸びているのが、まるでハードなヘアスタイルのようですよね。
同じく赤い腹びれは細く長く、リボンのようになっています。ですが先端は膨らんでいて、舟のオールにも似ています。この部分でエサのプランクトンの動きなどを感じることができます。
そんな特徴的な背びれと腹びれに対して尾びれはというと…実はありません。後ろにいくにつれ胴体が細くなっていて、まるでヘビのようではありませんか?
「竜宮の使い」?名前の由来は?
「リュウグウノツカイ」は、漢字で書くと「竜宮の使い」です。浦島太郎の物語に出てくる竜宮城の使いという意味だと考えられますが、はっきりとした由来は不明。
美しく、神秘的な姿からそう呼ばれるようになったのではないでしょうか。
英名のひとつ、「Oarfish」は、オール状になった腹びれが由来です。
また、ヨーロッパでは、リュウグウノツカイが姿を現すか否かで漁の成功を占っていたため「King of Herrings」、ニシンの王という名前でも呼ばれていました。
地震の前触れ?色々な言い伝え
謎多きリュウグウノツカイは色々な形で人間との関わりがありますが、そのひとつが言い伝えです。
海で目撃されるUMAの総称であるシーサーペントですが、その正体のひとつとしてリュウグウノツカイの名が挙げられます。たしかに、赤いトサカに長いヘビのような体を持つ不思議な生き物を見たらUMAだと思ってもおかしくないかも!?
・リュウグウノツカイが打ち上げられるのは大災害の前兆…?
深海魚が目撃されるのは大災害の前触れである…と言われることがあります。
実際に、日本でも何度か大地震の前にリュウグウノツカイが打ち上げられた、ということがありました。しかし、科学的な裏付けは今の所ありません。
とは言え、地震の前に何かを感じ取った動物がいつもと違う行動をする、ということはありますから、リュウグウノツカイも何かの異変を感じている可能性は否定できません。
・日本の人魚伝説
世界各地に伝わる人魚伝説、西洋などではジュゴンやマナティが元になったと言われていますが、どちらも日本近海には生息していませんよね。
江戸時代の作家、井原西鶴は著書の中で人魚の外見を「かしら、くれなゐの鶏冠ありて」と描写し、菊岡沾凉はひらひらした赤いものを首に巻いた、人の頭を持つ魚の話を書いています。
どちらの表現も、赤くて長いヒレを持つリュウグウノツカイに共通していると思いませんか?
リュウグウノツカイってどんな味?おいしいの?
さて気になるリュウグウノツカイのお味について。
たまに漁港近くで売られていたり、飲食店で変わり種として出されることがあるようです。
食べたことのある人の声をまとめると、
・水っぽい、味が薄い
・骨が柔らかい
だそうで、刺身で食べるよりも煮付けにする方が向いていると思われます。
リュウグウノツカイが分類されるアカマンボウ目、アカマンボウといえばマグロの代用魚として一部にはよく知られていますが、その仲間であるリュウグウノツカイはあまり積極的に食べられてはいないようですね。
まとめ
2. 平たく長~い体は最大で11mの報告も!赤いトサカがとっても目立つ!
3. 名前のはっきりとした由来は不明。神秘的な姿から名付けられた?
4. シーサーペントや日本の人魚の正体だという説も。地震の予兆だという科学的根拠は見つかっていない
5. 実は食べられる!でも柔らかくてあまり味がないとか…
昔から世界各地で目撃されていた… かもしれないリュウグウノツカイ。ですが深海魚の宿命か?まだまだわからないことが沢山あります。
見つかるときはすでにかなり弱っているため飼育も難しいですが、実は日本で人工授精~孵化が成功したことも。
今後の技術の発展で、リュウグウノツカイの謎が明らかになることを楽しみにしていましょう!